内製と外注の線引きは、コストではなく「自社が判断すべきかどうか」で決めます。判断軸は事業影響・頻度・専門性・属人度の4つ。仕分けの選択肢に「やめる」を必ず入れてください。そして外注しても、アカウントと権限の最終管理、契約と費用の把握、資産の一覧は手放さないこと。これを手放すと委託先を変更できなくなります。
情シスの体制設計、内製と外注の線引き、IT予算計画の策定を、実行の前段からご支援しています。運用の代行が必要な段階になれば情シス365へつなげられます。
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「この作業は自分たちでやるべきか、外に出すべきか」という議論が、案件のたびに一から始まる組織があります。判断軸が明文化されていないためです。
結果として、次のどちらかに寄ります。
- 全部自分たちでやる:担当者が疲弊し、重要な判断に時間を割けなくなる
- まるごと外に出す:何がどうなっているか説明できなくなり、委託先を変更できなくなる
どちらも極端です。必要なのは業務ごとに判断できる軸であり、一度決めれば次回から議論が短くなります。
判断の4軸
| 軸 | 問い | 内製に寄る条件 |
|---|---|---|
| 事業影響 | 止まると事業がどれだけ困るか | 影響が大きく、自社の事情を踏まえた判断が要る |
| 頻度 | どのくらいの回数・時間が発生するか | 低頻度で、その都度の判断が必要 |
| 専門性 | 特殊な知識・資格が要るか | 自社の業務知識のほうが重要 |
| 属人度 | 特定の人しかできない状態か | ―(属人度が高いものは、内製・外注のどちらでも先に手順化が要る) |
4つ目の属人度は、内製/外注の判断軸というより前提条件です。属人化したまま外注すると引き継ぎができず、内製のまま放置すると担当者が抜けたときに止まります。どちらを選ぶにせよ、先に手順化が必要だという合図として使ってください。
残す・出す・やめるに仕分ける
業務を棚卸ししたら、3つに仕分けます。
| 分類 | 典型例 | 考え方 |
|---|---|---|
| 残す | IT戦略・投資判断、ベンダー選定、セキュリティ方針、インシデント時の意思決定 | 自社の事情を知らないと決められないもの |
| 出す | ヘルプデスク、キッティング、アカウント発行、監視、定型のパッチ適用 | 手順化でき、頻度が高いもの |
| やめる | 使われていないシステムの保守、形骸化した報告、重複したツール | そもそも必要かを問い直す |
この仕分けを1枚の表にしておくと、次に新しい業務が発生したときも同じ基準で判断できます。表を作ること自体が成果物です。
「やめる」を選択肢に入れる
内製か外注かという二択で考えると、そもそも不要な業務がそのまま残ります。棚卸しをすると、必ず次のようなものが出てきます。
- 誰も見ていない月次レポート
- 後継システムに移行済みなのに、契約が続いている旧システム
- 機能が重複しているSaaSの二重契約
- 形骸化した申請フロー(承認者が内容を見ずに押している)
「やめる」は最もコスト効果が高い選択肢です。外注する前に、やめられないかを一度問うてください。外注すると、不要な業務にも管理工数が乗り続けます。
SaaSの重複はSaaS・ライセンス棚卸しの手順が使えます。M&A後でなくても同じやり方で洗い出せます。
外注しても手放さないもの
「出す」と決めた業務でも、次の4つは自社に残してください。手放すと委託先を変更できなくなります。
| 残すもの | なぜ |
|---|---|
| アカウントと権限の最終管理 | 全体管理者を委託先だけが持つ状態は、事業継続上のリスクになる |
| 契約と費用の把握 | 何にいくら払っているか説明できないと、見直しも交渉もできない |
| 資産の一覧 | 端末・ライセンス・システムの台帳。委託先の台帳を自社でも参照できる状態にする |
| 「どこに何があるか」の説明能力 | 詳細な操作は知らなくてよいが、構成の全体像は自社で語れる必要がある |
言い換えると、手を動かすことは出せても、統制は出せません。委託先の評価軸やSLAの設計も含め、この部分の考え方は情シスアウトソーシングの選び方で扱っています。
よくある失敗
- コストだけで決める:外注費と人件費を比べるだけでは足りません。委託先を管理する工数が必ず発生します
- 属人化したまま出す:手順書がない状態で引き継ぐと、委託先も再現できません。出す前に手順化が要ります
- 全部まとめて出す:一度に出すと、何が起きているか把握できなくなります。範囲を区切って段階的に
- 評価しない:出したきりで成果を測らないと、品質が落ちても気づけません。月次レポートの型を決めておきます
- 「安いから」で選ぶ:対応時間や初動速度が実態に合わないと、結局自社で対応することになります
年1回見直す
適切な線引きは、状況によって変わります。人員が増えれば内製の余地が広がり、システムが増えれば外注すべき範囲も変わります。
とくに担当者の異動や退職があった年は見直しの好機です。属人化していた業務が表面化するため、そのタイミングで手順化と再仕分けを行うと、同じ問題を繰り返しません。
見直しでは、前回の仕分け表を見ながら次の3点を確認します。
- 「残す」に入れた業務を、実際に自社で判断できているか
- 「出す」に入れた業務の品質と費用は妥当か
- 新たに「やめる」候補になったものはないか
よくある質問
内製と外注の判断は何を基準にすればよいですか?
事業への影響度、発生頻度、必要な専門性、属人化の度合いの4軸です。事業影響が大きく自社の判断が要る業務は残し、頻度が高く手順化できる業務は外に出す、という整理が基本になります。
ひとり情シスの場合、何を残せばよいですか?
意思決定と、外部への発注・評価です。手を動かす作業を抱えたまま判断も担うと、必ずどちらかが止まります。実行を外に出し、何をどう進めるかを決める役割に集中するほうが、組織としては安定します。
外注すればコストは下がりますか?
必ずしも下がりません。外注費に加えて、委託先を管理する工数が発生します。判断すべきは総額ではなく、同じ費用でより重要なことに時間を使えるようになるかどうかです。
外注しても自社に残すべきものは何ですか?
アカウントと権限の最終的な管理、契約と費用の把握、資産の一覧、そして「どこに何があるか」を説明できる状態です。これらを手放すと、委託先を変更できなくなります。
線引きはどのくらいの頻度で見直すべきですか?
年1回が目安です。人員体制、システム構成、事業の状況が変われば適切な線引きも変わります。とくに担当者の異動や退職があった年は、属人化していた業務が表面化するため、見直しの好機です。
まとめ
内製と外注の線引きは、コスト比較ではなく「自社が判断すべきかどうか」で決めます。事業影響・頻度・専門性の3軸で仕分け、属人度が高いものはどちらを選ぶにせよ先に手順化してください。
仕分けの選択肢に「やめる」を必ず入れてください。外注する前に不要な業務を落とすほうが、コスト効果は高くなります。
そして外注しても、アカウントと権限の最終管理、契約と費用の把握、資産の一覧、構成の説明能力は手放さないこと。手を動かすことは出せても、統制は出せません。年1回、とくに担当者の異動があった年に見直せば、線引きは陳腐化しません。