DX認定は、経済産業省が情報処理促進法に基づいてDXに取り組む企業を認定する国の制度です。審査されるのはDXの「実績」ではなく「取組姿勢」で、DXが完了している必要はありません。経営ビジョンとDX戦略、推進体制などを自社サイトで公表することが要件です。申請はオンラインで完結し、審査期間は概ね60日。補助金の加点や金融支援の対象になるほか、取引先・金融機関への説明材料として使えます。
DX認定制度とは
DX認定制度は、経済産業省が「情報処理の促進に関する法律(情報処理促進法)」に基づいて運用する国の認定制度です。同省が定めるデジタルガバナンス・コードの基本事項に対応している企業を、国が認定します。
誤解されやすいのですが、この制度は「DXが進んでいる企業」を表彰するものではありません。認定の対象になるのは、DXに向けた準備が整っており、方向性を定めて動き出している企業です。売上に占めるIT投資比率や、システムの先進性が問われるわけではありません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠法 | 情報処理の促進に関する法律 |
| 所管 | 経済産業省(申請受付・審査はIPAが担当) |
| 審査の観点 | デジタルガバナンス・コードの基本事項への対応 |
| 審査対象 | DXの実績ではなく、ビジョン・戦略・体制といった取組姿勢 |
| 申請方法 | オンライン申請 |
| 審査期間 | 概ね60日 |
| 申請費用 | 無料 |
中小企業が取得するメリット
1. 補助金・金融支援での優遇
DX認定は、各種補助金の加点項目として扱われるケースがあります。IT導入補助金やものづくり補助金など、採択に競争がある制度では、加点があるかどうかで結果が変わることも珍しくありません。また日本政策金融公庫の融資制度など、認定事業者を対象とした金融支援の枠組みもあります。
2. 対外的な信頼の獲得
取引先から「DXにどう取り組んでいるか」を問われる機会が増えています。とくにサプライチェーンの上流に大企業がいる場合、セキュリティ体制と並んでDXの姿勢を確認されることがあります。国の認定は、自社の説明に客観的な裏付けを与えます。
3. 採用と社内浸透
認定を受けるには経営ビジョンとDX戦略を自社サイトで公表する必要があります。この「公表」というプロセス自体が、社内でDXの方向性を言語化し、共有する契機になります。求職者に対しても、IT・デジタルへの投資姿勢を示す材料になります。
実務上いちばん大きいのは、申請のために「経営ビジョン」「DX戦略」「推進体制」「指標」を文章に落とす作業そのものです。ここが曖昧なまま個別ツールを導入していた企業ほど、申請準備の過程で投資の優先順位が整理されます。
認定の要件
認定要件はデジタルガバナンス・コードの基本事項に沿って構成されています。中小企業が押さえるべき要点は次のとおりです。
| 領域 | 求められること | 公表の要否 |
|---|---|---|
| ビジョン・ビジネスモデル | デジタル技術による社会・競争環境の変化を踏まえた経営ビジョンを示す | 要(自社サイト) |
| 戦略 | ビジョン実現に向けた戦略を策定する | 要 |
| 組織・体制 | 戦略推進のための体制(責任者、推進部門)を整備する | 要 |
| デジタル技術活用・IT資産 | ITシステムの現状と課題を把握し、対応方針を持つ | 要 |
| 成果指標 | 戦略の達成度を測る指標を定める | 要 |
| サイバーセキュリティ | サイバーセキュリティ対策を実施している | 要 |
注意したいのが最後のサイバーセキュリティです。DX認定は「攻めのIT」の認定と思われがちですが、要件には守りの側面が含まれています。MFAの適用、EDRの導入、インシデント対応体制といった基本対策が未整備だと、ここでつまずきます。
申請の進め方
| Step | 内容 | 期間目安 |
|---|---|---|
| 1. 現状整理 | 経営計画のうちデジタルに関わる部分を抜き出し、IT資産と課題を棚卸しする | 2〜3週間 |
| 2. ビジョン・戦略の文書化 | デジタル技術を踏まえた経営ビジョン、DX戦略、推進体制、成果指標を文章にする | 2〜4週間 |
| 3. セキュリティ対策の確認 | MFA・EDR・バックアップ・インシデント対応の実施状況を確認し、不足を埋める | 2〜4週間 |
| 4. 自社サイトへの公表 | ビジョン・戦略・体制・指標を自社サイトに掲載する | 1週間 |
| 5. オンライン申請 | 申請書を作成し提出する | 1週間 |
| 6. 審査・認定 | 不備があれば差し戻し。修正のうえ再提出 | 概ね60日 |
期間は合計で3〜5か月をみておくと安全です。とくにStep 2の文書化と、Step 3のセキュリティ対策で時間がかかります。補助金の申請時期から逆算して着手してください。
つまずきやすいポイント
| つまずき | なぜ起きるか | 対処 |
|---|---|---|
| ビジョンが「業務効率化」で止まる | デジタル技術による環境変化への言及がない | 自社の市場・顧客・競合がデジタルでどう変わるかを起点に書く |
| 戦略と体制が結び付いていない | 戦略はあるが誰が推進するか書かれていない | 責任者(役員クラス)と推進部門を明記する |
| 成果指標が定性的 | 「業務を効率化する」など測れない表現 | 削減時間、処理件数、稼働率など数値で定義する |
| セキュリティの記載が薄い | 攻めのITに寄りすぎている | MFA・EDR・バックアップ・インシデント対応の実施状況を具体的に書く |
| 公表を忘れている | 申請書だけ作って自社サイトに載せていない | 申請前に公開URLを確定させる |
SCS評価制度・ISMSとの関係
| 制度 | 見るもの | DX認定との関係 |
|---|---|---|
| DX認定 | DXへの取組姿勢(ビジョン・戦略・体制・指標・セキュリティ) | — |
| SCS評価制度 | サプライチェーンにおけるセキュリティ対策の実施状況 | DX認定のセキュリティ要件と重なる部分がある |
| ISMS(ISO 27001) | 情報セキュリティマネジメントの仕組み | 取得済みならDX認定のセキュリティ要件を説明しやすい |
3制度は目的が異なるため、どれかを取れば他が不要になるという関係にはありません。ただしセキュリティ対策の実装と文書は共通して使えるため、並行して進めるほど1件あたりの負担は下がります。SCS★3の準備を進めている企業であれば、その資産をDX認定のセキュリティ要件にそのまま転用できます。
BTNコンサルティングの支援
BTNコンサルティングでは、DX認定の申請準備を支援しています。経営ビジョンとDX戦略の文書化、IT資産の棚卸し、成果指標の設計に加え、要件に含まれるサイバーセキュリティ対策(MFA・EDR・バックアップ・インシデント対応体制)の実装までを一貫してご支援します。SCS評価制度への対応と並行して進めることも可能です。
DX認定の要件にはサイバーセキュリティ対策が含まれます。MFA・EDR・バックアップ・インシデント対応の整備から、運用の継続までをご支援します。
情シス365(セキュリティ運用) を見る →よくある質問
DX認定を取るにはDXが完了している必要がありますか?
必要ありません。審査されるのはDXの実績ではなく取組姿勢です。経営ビジョンにDXを位置づけ、戦略と推進体制、成果指標を定めて公表していることが認定の条件になります。
申請に費用はかかりますか?
申請自体は無料で、オンラインで完結します。審査期間は概ね60日です。ただし要件を満たすための文書化やセキュリティ対策の実装には、社内工数または外部支援の費用がかかります。
中小企業が取得するとどんなメリットがありますか?
各種補助金の加点項目として扱われるケースがあること、認定事業者を対象とした金融支援の枠組みがあること、取引先や金融機関に対してDXへの取組を客観的に説明できることが主なメリットです。
セキュリティ対策も要件に含まれるのですか?
含まれます。DX認定は「攻めのIT」だけの認定ではなく、サイバーセキュリティ対策の実施が要件に入っています。MFAの適用、EDRの導入、バックアップ、インシデント対応体制といった基本対策が未整備だとここでつまずきます。
準備期間はどのくらい必要ですか?
現状整理に2〜3週間、ビジョン・戦略の文書化に2〜4週間、セキュリティ対策の確認と補強に2〜4週間、公表と申請に2週間、審査に概ね60日で、合計3〜5か月をみておくと確実です。
まとめ
DX認定は、情報処理促進法に基づく国の認定制度で、審査されるのはDXの実績ではなく取組姿勢です。経営ビジョン・DX戦略・推進体制・成果指標・サイバーセキュリティ対策を整理し、自社サイトで公表することが要件になります。申請は無料でオンライン完結、審査は概ね60日。準備を含めると3〜5か月をみておくと確実です。補助金の加点や金融支援に加え、申請準備そのものがIT投資の優先順位を整理する機会になります。