なぜ「IT棚卸し」がDXの第一歩なのか
「DXを推進したいが何から始めればいいかわからない」——中小企業の経営者からもっとも多く聞く言葉です。DXというと先端テクノロジーやAI導入をイメージしがちですが、自社のIT環境の現状を正しく把握することが出発点です。
地図のない状態で目的地には到達できないのと同じで、現状が見えていなければ適切なIT投資判断はできません。どんなSaaSを使っているか、月々のIT関連支出はいくらか、セキュリティ上のリスクはどこにあるか——これらを可視化するのが「IT棚卸し」です。
IT棚卸しの対象領域
① ハードウェア
- PC(台数、機種、OS、購入時期、保証期限)
- サーバー(オンプレミス / クラウド)
- ネットワーク機器(ルーター、スイッチ、Wi-Fiアクセスポイント)
- プリンター、複合機
- 携帯電話、スマートフォン、タブレット
② ソフトウェア・SaaS
- 全社利用SaaS(Microsoft 365、Google Workspace、Slack等)
- 部門別SaaS(営業:CRM、経理:会計ソフト、人事:勤怠管理等)
- オンプレミスソフトウェア(ライセンス形態、バージョン)
- 個人利用のSaaS(シャドーIT)
③ コスト
- SaaS月額・年額費用の一覧
- ハードウェアのリース料、保守費用
- ネットワーク回線費用
- 外部委託費用(開発、運用保守)
- IT人件費(専任・兼任含む)
④ セキュリティ
- ウイルス対策の導入状況
- 多要素認証の適用範囲
- バックアップの取得状況と復旧テスト実績
- 退職者アカウントの管理状況
- パスワードポリシーの有無
棚卸しの具体的な進め方
- 担当者の決定 — IT担当者がいれば中心となり、いなければ経理部門と共同で進める(請求書・支払い情報がIT資産の手がかりになる)
- 支払い情報からSaaSを洗い出す — クレジットカード明細、口座引き落とし、経費精算から月額・年額のIT支出を抽出
- 各部門へのヒアリング — 部門で独自に契約しているSaaS(シャドーIT)を把握。「仕事で使っているWebサービスを全て教えてください」とアンケートを配布
- 一覧表の作成 — スプレッドシートに「サービス名・月額費用・利用人数・契約日・管理者」を整理
- リスクの識別 — 古いPC、未更新のソフトウェア、MFA未適用のサービス、退職者アカウントなどをマーク
IT棚卸しチェックリスト
| チェック項目 | 確認内容 |
|---|---|
| PC台数と更新計画 | 購入5年以上のPCはないか。Windows 10サポート終了への対応は |
| SaaS契約一覧 | 全社で何本のSaaSを契約しているか。重複はないか |
| 月額IT支出 | ITに月々いくら払っているか。コスト削減余地は |
| 管理者アカウント | 各サービスの管理者は誰か。退職者のアカウントは残っていないか |
| バックアップ | 重要データのバックアップは取れているか。復旧テストは |
| MFA | 全サービスでMFAは有効か。特にメール、クラウドストレージ |
| ネットワーク機器 | ルーターやVPN装置のファームウェアは最新か |
棚卸し後のアクションプラン
棚卸しが完了したら、以下の優先順位でアクションに移しましょう。
- セキュリティリスクへの即時対応 — MFA未導入サービスへのMFA適用、退職者アカウントの削除、古い機器の更新計画策定
- コスト最適化 — 重複SaaSの整理・解約、利用率の低いライセンスの見直し
- IT戦略の策定 — 棚卸し結果を基に、今後1〜3年のIT投資計画を策定
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まとめ
DXの第一歩は、最新テクノロジーの導入ではなく「現状の可視化」です。IT棚卸しを行うことで、無駄なコスト、セキュリティリスク、改善すべきポイントが明確になります。まずはSaaS契約の洗い出しから始めてみてください。