IT-DDとは

IT-DD(ITデューデリジェンス)とは、M&A(合併・買収)の際に、対象企業のIT環境を調査・評価するプロセスです。財務DDや法務DDと並び、買収判断に必要な調査の一つですが、中小企業のM&Aでは見落とされがちな領域です。

IT-DDの目的は、対象企業のIT環境に潜むリスク(技術的負債、セキュリティ脆弱性、ライセンス違反)統合コスト(システム統合、テナント移行に必要な費用・期間)を事前に把握し、買収価格や統合計画に反映することです。

なぜIT-DDが重要なのか

隠れたITコストの発見

対象企業が利用しているサーバーのリース残債、サポート切れOS、ライセンス不足のソフトウェア、更新が迫るネットワーク機器——これらはBS/PLに表れにくい「隠れたITコスト」であり、買収後に数百万〜数千万円の追加投資が必要になる場合があります。

セキュリティリスクの継承

対象企業のセキュリティ対策が不十分な場合、買収後にインシデントが発生するリスクを引き継ぐことになります。過去に漏洩したデータや、管理されていないアカウントが残っている可能性もあります。

統合コストの正確な見積もり

M&A後のIT統合(IT PMI)には、テナント統合、メールドメイン移行、ファイルサーバー統合、ネットワーク統合など多岐にわたる作業が発生します。IT-DDなしにPMI計画を立てると、想定の2〜3倍のコストと期間がかかることは珍しくありません。

調査対象の6領域

領域主な調査項目
① ITインフラサーバー構成、ネットワーク構成図、回線契約、データセンター/クラウド利用状況
② アプリケーション業務システム一覧、SaaS契約一覧、カスタム開発システムの技術スタック
③ セキュリティセキュリティポリシーの有無、MFA導入状況、EDR/ファイアウォール、過去のインシデント履歴
④ ライセンスソフトウェアライセンスの過不足、Microsoft 365/Google Workspaceのプラン・ユーザー数
⑤ IT組織・人材IT担当者の人数・スキル、外部ベンダーとの契約内容、運用ドキュメントの整備状況
⑥ IT費用過去3年のIT支出推移、ハード/ソフト/保守/人件費の内訳、リース残債

IT-DDの進め方

Phase 1:資料請求(1〜2週間)

対象企業に対してIT関連資料の提出を依頼します。ネットワーク構成図、システム一覧、SaaS契約一覧、ライセンス台帳、IT予算資料などが対象です。

Phase 2:資料分析+Q&A(2〜3週間)

提出された資料を分析し、不明点や矛盾点を洗い出して質問リストを作成します。必要に応じてIT担当者へのインタビューを実施します。

Phase 3:現地調査(1〜2日)

サーバールーム、ネットワーク機器、PC環境の現地確認を行います。資料に記載されていない実態(未管理の機器、非公式のSaaS利用等)を発見するための重要なステップです。

Phase 4:DD報告書の作成(1〜2週間)

調査結果をリスク・統合コスト・推奨事項の3つの観点でまとめた報告書を作成し、買収チームに報告します。

チェックリスト(抜粋)

カテゴリチェック項目
インフラサーバーのOS/ミドルウェアのサポート状況
ネットワーク機器のEoL(End of Life)時期
クラウドサービスの契約主体と管理者権限の所在
セキュリティMFAの導入状況(全ユーザー or 管理者のみ)
EDR/アンチウイルスの導入・運用状況
過去3年間のセキュリティインシデント履歴
ライセンスMicrosoft 365 / Google Workspaceのプランと利用者数
CAL(Client Access License)の過不足
退職者アカウントの残存状況

IT-DDからIT PMIへ

IT-DDの調査結果は、M&A成立後のIT PMI(Post Merger Integration)計画に直結します。IT-DDで把握したリスクと統合コストを基に、テナント統合、メールドメイン移行、ファイルサーバー統合、ネットワーク統合の優先順位とスケジュールを策定します。

IT-DDとIT PMIを同じパートナーが一貫して担当することで、調査結果がそのまま統合計画に引き継がれ、二重調査のコストと時間を削減できます。

BTNコンサルティングの支援

IT-DD(ITデューデリジェンス)の実施

M&Aの買い手企業に対して、対象企業のIT環境調査を実施します。資料分析、インタビュー、現地調査、DD報告書の作成まで一括で対応します。

IT PMI(M&A後のIT統合)の計画・実行

IT-DDの結果を基に、テナント統合、メール/ファイル移行、ネットワーク統合、セキュリティ統一を計画・実行します。

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まとめ

IT-DDはM&Aにおける「隠れたITコスト」と「セキュリティリスク」を事前に把握するための不可欠なプロセスです。調査結果をIT PMI計画に直結させることで、統合の成功確率を大幅に高められます。IT-DDとPMIを一貫して担当できるパートナーを選ぶことが、コストと品質の両面で最も効果的です。