シャドーITとは
シャドーITとは、会社のIT部門が把握・承認していないITサービスやデバイスを従業員が業務に利用することです。個人のGoogleドライブに業務ファイルをアップロードする、無料のチャットツールで顧客とやり取りする、私物のUSBメモリにデータをコピーする——これらはすべてシャドーITに該当します。
ガートナーの調査によれば、企業のSaaS利用のうち約30〜40%はIT部門が把握していないとされています。中小企業ではIT管理体制が手薄なため、この割合はさらに高い可能性があります。
よくあるシャドーITの具体例
| カテゴリ | 具体例 | リスクレベル |
|---|---|---|
| ファイル共有 | 個人Googleドライブ、Dropbox無料版での業務ファイル共有 | 高 |
| コミュニケーション | 個人LINEでの業務連絡、WhatsAppでの顧客やり取り | 高 |
| プロジェクト管理 | 個人契約のTrello、Notion、Asanaの業務利用 | 中 |
| AI・翻訳 | ChatGPT無料版に機密情報を入力、DeepLで社外秘文書を翻訳 | 高 |
| デバイス | 私物スマホでの業務メール閲覧、USBメモリの持ち込み | 高 |
| 開発ツール | 個人GitHubリポジトリにソースコードを保管 | 高 |
特に近年問題になっているのが生成AIへの機密情報入力です。社員が善意で業務効率化のためにChatGPT無料版を使い、そこに顧客データや契約内容を入力してしまうケースが増えています。
シャドーITの4つのリスク
① 情報漏洩
会社が管理していないサービスには、セキュリティポリシーが適用されません。個人アカウントのサービスは退職後もアクセス可能であり、退職者が業務データを持ち出すリスクがあります。また、無料サービスは広告表示やデータ収集を行うものが多く、機密情報が第三者に渡る可能性もあります。
② コンプライアンス違反
個人情報保護法やGDPRの対象となるデータを、セキュリティ基準を満たさないサービスに保管することは法令違反に該当する可能性があります。「知らなかった」は免責にはなりません。
③ データの散逸
業務データが個人アカウントに分散していると、引き継ぎが困難になります。担当者の退職・異動時に、どのサービスにどのデータがあるかわからなくなり、業務が停滞する原因になります。
④ コスト増大
同じ目的のツールを部門ごとにバラバラに契約していると、ボリュームディスカウントが効かず、全社で見れば不必要なコストが発生します。
シャドーIT対策の5ステップ
- 現状の可視化 — 全社員にアンケートを実施し、業務で使っているWebサービス・アプリを洗い出す。クレジットカード明細・経費精算データからも抽出する
- SaaS利用ポリシーの策定 — 「会社が承認したSaaS以外は業務利用禁止」というルールを明文化。申請・承認フローを整備する
- 承認済みSaaSの代替提供 — 禁止するだけでは形骸化する。社員がシャドーITに頼る理由(業務に必要な機能が公式ツールにない)を理解し、正規の代替手段を提供する
- 技術的なコントロール — 条件付きアクセス(Entra ID)でアクセスを制御、DLP(データ損失防止)ポリシーで機密データの持ち出しを検知、CASB(Cloud Access Security Broker)でSaaS利用を可視化
- 定期的な棚卸しと教育 — 年に2回以上のSaaS棚卸しを実施。セキュリティ研修でシャドーITのリスクを啓発する
SaaS管理に使えるツール
| ツール | 概要 | 対象規模 |
|---|---|---|
| Microsoft Defender for Cloud Apps | M365連携のCASB。SaaS利用の可視化・制御 | 50名〜 |
| Microsoft Entra ID 条件付きアクセス | 承認済みデバイス・場所からのみアクセスを許可 | 30名〜 |
| スプレッドシート管理 | SaaS台帳を手動管理(小規模向け) | 〜30名 |
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まとめ
シャドーITは悪意から生まれるものではなく、多くの場合「業務を効率化したい」という社員の善意が出発点です。禁止だけでなく、正規の代替手段を提供しつつ、技術的なコントロールで安全を担保する——この両輪が対策の鍵です。