SCS評価制度は任意の制度で、取得しなくても法的な不利益はありません。ただし発注者が受注者に必要な★の段階を提示することを想定した制度設計のため、取引先から取得を求められる場面は生じ得ます。政府調達での取扱いは2026年8月時点で公表されておらず、「入札から除外される」といった説明は制度の趣旨と異なります。自社が実際にどの水準を求められているかを確認することが出発点です。
SCS評価制度の★取得について、現状アセスメントからギャップ分析、技術対策の実装、申請サポートまでをワンストップでご支援しています。
SCS評価制度 対応支援 を見る →SCS評価制度 総合ガイド「★3を持っていますか?」と聞かれたら
SCS評価制度は、2社間の取引契約等において、発注者が受注者に適切なサイバーセキュリティ対策の段階(★)を提示し、実施状況を相互に確認することを想定した任意の制度です。この設計上、取引の場面で「★はいくつか」と問われることは起こり得ます。
一方で、制度が取引そのものを規制するわけではありません。求められる水準は取引先ごとに異なり、業界の一般論から自動的に決まるものでもありません。まず確認すべきは、自社の主要取引先が実際に何を求めているかです。
サプライチェーン攻撃が深刻化するなか、発注元企業は自社だけでなく取引先全体のセキュリティレベルを担保する必要に迫られています。SCS評価制度は、その「物差し」として機能し始めています。
業界別の要求動向
SCS評価制度の取引要件化は、業界によって進捗に差があります。以下は主要業界の動向です。
業種ごとの具体的な対応は、IT企業(受託開発・SIer)、建設業、物流業の各記事で扱っています。
| 業界 | 要求レベル | 動向・特徴 |
|---|---|---|
| 自動車 | ★3が想定されやすい | 従前からサプライヤーへのセキュリティ要求が体系化されている業界。自工会ガイドラインなど既存の枠組みとの関係整理が論点になる |
| 半導体・電子部品 | ★3〜★4が想定されやすい | 経済安全保障の観点からサプライチェーンの可視化要請が強い領域 |
| 金融・保険 | ★3が想定されやすい | 金融庁の監督指針が求める委託先管理と、確認手段として整合させやすい |
| 製薬・医療機器 | ★3が想定されやすい | 医療機器のサイバーセキュリティ要件や、治験データの委託先管理と関連する |
| 建設・インフラ | 取引先次第 | 元請の管理方針に左右される。公共工事での取扱いは公表されていない |
いずれの業界についても、制度として★の取得を義務づける仕組みはありません。実際に求められる水準は取引先ごとに異なるため、業界の一般論ではなく、自社の主要取引先が何を求めているかを確認してください。まだ何も求められていない段階で、業界動向だけを根拠に★3を目指す必要はありません。
政府調達での取扱いは公表されていない
2026年8月時点で、政府調達においてSCS格付けをどう扱うかは公表されていません。2026年3月の制度構築方針でも、★格付けを入札参加資格や加点要素と結びつける方針は示されていません。
むしろ経済産業省と内閣官房国家サイバー統括室は2026年4月27日、「今すぐ評価を取得しないと入札から除外される」といった営業活動が報告されているとして注意喚起を公表しました。本制度は2社間の取引契約等で発注者が受注者に対策の段階を提示することを想定した任意の制度であり、個社間の商取引に規制措置を講じるものではありません。
政府調達での活用可能性そのものを否定するものではありませんが、現時点で決まっていない事項を根拠に取得を急がせる説明は、制度の趣旨と異なります。今後の詳細は制度のスキームオーナーであるIPAから公表されるため、一次情報を確認してください。不適切な勧誘の見分け方はSCS評価制度をかたる不適切な勧誘への注意喚起で解説しています。
大企業のサプライチェーンリスク管理方針
大企業がSCS格付けを取引要件に組み込む背景には、サプライチェーンリスク管理の強化があります。
近年のサプライチェーン攻撃では、セキュリティ対策の弱い取引先を経由して大企業の機密情報が窃取される事例が多発しています。大企業としては、自社のセキュリティ投資だけでは対策が不十分であり、取引先全体のセキュリティレベルを底上げする必要があります。
SCS評価制度は、取引先のセキュリティ対策の段階を共通の物差しで示す仕組みとして、こうした管理に用いられることが想定されています。ただし制度開始は2026年度末頃の予定であり、現時点では各社が独自の質問票で確認しているのが実情です。具体的な対応の全体像はSCS評価制度 対応の完全ガイドをご覧ください。
未取得企業のリスク
SCS格付けを取得しない場合、以下のリスクが現実のものとなります。
| リスク | 影響度 | 詳細 |
|---|---|---|
| 取引条件への不適合 | 取引先の方針による | 取引先が★の段階を取引条件として提示した場合に、その条件を満たせない |
| 提案時の説明負担 | 中程度 | 格付けがない場合、対策状況を個別の資料や質問票で説明する手間が残る |
| サイバー保険料への影響 | 不明(想定) | 保険会社が格付けを引受審査で参照する可能性はあるが、現時点では想定にとどまる |
| インシデント時の責任拡大 | 高い | 公的制度で求められる水準の対策を講じていない場合、善管注意義務違反を問われる可能性 |
| 企業ブランドの毀損 | 中程度 | セキュリティレベルの「見える化」により、格付けの低い企業は市場での信頼が低下 |
SCS評価制度に未対応の場合の法的リスクや罰則については、SCS評価制度の義務化と罰則で詳しく解説しています。
対応戦略:求められている水準から逆算する
判断の起点は制度の開始時期ではなく、自社の主要取引先が実際にどの水準を求めているかです。求められていない段階で最上位を目指すと、費用と工数が過剰になります。
取得を検討する意味があるケース:
- 取引先から具体的に★の段階を提示された:この場合は提示された水準に対してギャップを確認する
- 質問票への回答負担が大きい:取引先ごとのセキュリティ質問票に個別対応している場合、格付けで説明を共通化できる可能性がある
- 対策の棚卸しをしたい:要求事項を自社の現状確認のチェックリストとして使う。この用途なら取得の可否と切り離して着手できる
なお、要求事項・評価基準を満たす具体的な実装例をまとめた評価ガイドは2026年秋頃の公表が予定されています。詳細設計や大きな投資判断は、この公表を待って行うほうが手戻りが少なくなります。
推奨する対応スケジュール:
| 時期 | アクション |
|---|---|
| 2026年4〜5月 | ギャップ分析の実施。現状のセキュリティ対策と★3要件の差を明確化 |
| 2026年5〜6月 | 対応計画の策定。ポリシー整備と技術対策の優先順位付け |
| 2026年6〜8月 | 技術対策の実装。MFA、EDR、バックアップ、資産管理の導入 |
| 2026年8〜9月 | 従業員教育の実施。セキュリティポリシーの周知とフィッシング訓練 |
| 2026年9〜12月 | エビデンス整備。申請方法の公開(2026年10月頃)を確認 |
| 2027年1〜2月 | 自己評価の実施とセキュリティ専門家による確認 |
| 2027年3月頃 | ★3の申請・提出(運用開始) |
★3取得の具体的な手順についてはSCS★3取得の方法を徹底解説をご覧ください。また、SCS対応支援の全体像はSCS対応ガイドで確認できます。
BTNコンサルティングのSCS対応支援
BTNコンサルティングでは、SCS★3の早期取得を目指す中小企業を包括的に支援しています。
- ギャップ分析:★3の26項目と現状のセキュリティ対策を突き合わせ、未対応項目を特定
- 技術対策の実装:Microsoft 365を活用したMFA・EDR・バックアップの一括導入
- ポリシー策定:SCS要件に準拠したセキュリティポリシーのテンプレート提供
- 申請サポート:自己評価シートの作成とエビデンス整備を支援
- 取得後の運用:「情シス365」のセキュリティ運用支援による継続的な監視・運用代行
SCS対応支援の詳細はSCS対応支援サービスページをご覧ください。
よくある質問
取引先から★3を求められることはありますか?
あり得ます。本制度は、2社間の取引契約等において発注者が受注者に必要な対策の段階を提示することを想定した設計です。ただしこれは個社間の取引判断であり、制度が取引を規制するものではありません。取引先から具体的な提示を受けていない段階では、一律に★3を目指す必要はありません。
どの業界で要求が強いですか?
従前からサプライヤーへのセキュリティ要求が体系化されている自動車、経済安全保障の観点から可視化の要請が強い半導体・電子部品、監督指針が委託先管理を求める金融・保険などで、★の提示が想定されやすいと考えられます。ただし制度として業界単位で水準を義務づける仕組みはなく、実際の要求は取引先ごとに異なります。
政府調達ではどう扱われますか?
2026年8月時点で公表されていません。2026年3月の制度構築方針でも、★格付けを入札参加資格や加点要素と結びつける方針は示されていません。経済産業省と内閣官房国家サイバー統括室は2026年4月27日の注意喚起で、本制度は個社間の商取引に規制措置を講じるものではないと明示しており、「取得しないと入札から除外される」という説明は制度の趣旨と異なります。
未取得だとどんなリスクがありますか?
制度上の不利益はありません。生じ得るのは、取引先が★の段階を取引条件として提示した場合にその条件を満たせないこと、格付けがないために対策状況を取引先ごとの質問票で個別に説明する手間が残ることです。サイバー保険料への影響は現時点では想定にとどまります。
まとめ
SCS評価制度は任意の制度で、取得しなくても法的な不利益はありません。ただし発注者が受注者に必要な★の段階を提示することを想定した制度設計のため、取引先から取得を求められる場面は生じ得ます。政府調達での取扱いは2026年8月時点で公表されておらず、「入札から除外される」といった説明は制度の趣旨と異なります。自社が実際にどの水準を求められているかを確認することが出発点です。本記事のポイントを整理します。
- 制度は任意。取得しなくても法的な不利益はなく、商取引を規制するものでもない
- 政府調達での取扱いは未公表。「入札から除外される」という説明は制度の趣旨と異なる
- 求められる水準は取引先ごとに異なる。業界動向ではなく、自社の取引先への確認が起点
- 評価ガイドは2026年秋頃に公表予定。大きな投資判断はその内容を確認してからでも遅くない
取引先から具体的な要求を受けている場合や、自社の対策状況を棚卸ししたい場合は、BTNコンサルティングの60分無料相談をご活用ください。現状の確認から、必要な範囲の見極めをご一緒します。