SCS評価制度は法的義務ではなく、直接的な罰則もありません。経済産業省は2026年4月の注意喚起で、本制度が任意の制度であり、個社間の商取引を規制するものではないこと、特定のセキュリティ製品の導入を必須とするものではないことを明示しています。一方で、発注者が受注者に必要な★の段階を提示する制度設計であるため、取引先から取得を求められる場面は生じ得ます。取引の実態に照らして必要な段階を見極めることが実務上の要点です。
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SCS評価制度 対応支援 を見る →SCS評価制度 総合ガイドSCS評価制度は「法的義務」ではない
結論から言うと、SCS評価制度の取得は法律で義務づけられたものではありません。経済産業省が推進する任意の格付け制度であり、取得しなくても法的な罰則はありません。
SCS評価制度は、企業のサプライチェーンセキュリティ対策レベルを★1〜★5で格付けし、取引先間でセキュリティの信頼性を可視化するための仕組みです。ISO 27001(ISMS)やプライバシーマークと同様、取得は各企業の任意判断に委ねられています。
SCS評価制度には、ISMSやPマークのような法律による直接的な義務規定はありません。ただし、経済産業省の「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」において、サプライチェーン管理の具体的手段としてSCS格付けの活用が推奨されています。
取引のなかで取得を求められる場面
法的な義務ではないものの、SCS評価制度は2社間の取引契約等において、発注者が受注者に必要な★の段階を提示することを想定した制度設計になっています。そのため、取引の場面で取得を求められることがあります。
1. 取引条件として提示される場合
発注者が取引先に対して★3以上の取得を求める動きが、自動車・製造業・金融などの業界で報じられています。ただしこれは個社間の取引判断であり、制度が取引を規制するものではありません。自社が実際にどの水準を求められているかは、取引先への確認が起点になります。まだ何も求められていない段階で、一律に★3を目指す必要はありません。
2. 政府調達での取扱い(2026年8月時点で未公表)
2026年度末の本格運用開始に伴い、政府・自治体の調達においてSCS格付けが加点要素として採用される見通しです。将来的には★3以上を入札参加の要件とする方針も示されています。
3. サイバー保険料への影響
損害保険各社がサイバー保険の引受審査においてSCS格付けを参照することが想定されます。格付けが高い企業ほど保険料が優遇され、未取得の企業は保険料が割高になる、あるいは引受を拒否されるケースも想定されます。
未対応のビジネスリスク
SCS評価制度に対応しない場合の具体的なビジネスリスクを整理します。
| リスク | 影響 | 対策 |
|---|---|---|
| 取引機会の喪失 | 大手取引先からの取引停止・新規取引の不成立 | ★3の早期取得で取引条件を確保 |
| サイバー保険料の上昇 | 保険料が割高になる、引受拒否の可能性 | 格付け取得で保険料の優遇を受ける |
| インシデント時の責任追及 | 「対策を怠った」として損害賠償リスクが増大 | SCS対応で注意義務の履行を証明 |
| 風評リスク | 同業他社が取得する中で「対策が遅れている企業」と見られる | 格付け取得と公開で信頼性を発信 |
| 採用への悪影響 | セキュリティ意識の高い人材が敬遠 | 対策の見える化で企業イメージ向上 |
関連する法的義務
SCS評価制度自体に罰則はありませんが、関連する法律にはセキュリティ対策の義務が定められています。SCS対応はこれらの法的義務の履行にも役立ちます。
サイバー対処能力強化法(能動的サイバー防御法)
サイバー対処能力強化法は、基幹インフラ事業者に対してインシデント報告義務を課しています。報告義務に違反した場合は行政処分の対象となります。SCS評価制度のインシデント対応要件に対応することは、この法的義務の履行を支援します。
個人情報保護法の安全管理措置
個人情報保護法は、個人情報取扱事業者に対して安全管理措置(技術的・組織的)を義務づけています。2022年の改正で漏洩時の報告義務が追加され、対応が不十分な場合は最大1億円の罰金が科されます。SCSの技術要件はこの安全管理措置と多くが重複しています。
不正競争防止法(営業秘密管理)
営業秘密として法的保護を受けるためには「秘密管理性」が要件です。SCS対応でアクセス制御やログ管理を整備することは、営業秘密の保護要件を満たすことにもつながります。
罰則はないが、取引上の影響は生じ得る
制度上の罰則はありません。生じ得るのは、取引先との個別の契約関係のなかでの影響です。
- 取引条件への不適合:取引先が★の段階を取引条件として提示した場合に、その条件を満たせない
- 保険料への影響:損害保険各社が引受審査で格付けを参照する可能性はあるが、現時点では想定にとどまる
- 損害賠償の判断材料:インシデント発生時の訴訟で「業界標準の対策を講じていたか」が争点になり得る
経済産業省と内閣官房国家サイバー統括室は2026年4月27日、「評価を取得していないと商取引が規制される」「今すぐ評価を取得しないと入札から除外される」といった営業活動が報告されているとして注意喚起を公表しました。本制度は任意の制度であり、個社間の商取引に規制措置を講じるものではありません。こうした説明を伴う勧誘を受けた場合の見分け方はSCS評価制度をかたる不適切な勧誘への注意喚起で解説しています。
サイバーインシデントに起因する損害賠償訴訟では、「業界標準の対策を講じていたか」が過失の判断基準となります。SCS格付けが業界標準となった後に対応していなければ、「注意義務違反」と認定されるリスクが高まります。
早期対応のメリット
「義務ではないから対応しない」のではなく、早期対応には明確なビジネスメリットがあります。
- 取引の安定:大手取引先からの信頼を確保し、取引継続・拡大につなげる
- 競争優位:同業他社に先駆けて格付けを取得し、差別化を図る
- コスト削減:サイバー保険料の優遇、インシデント発生時の損害軽減
- 経営基盤の強化:セキュリティ対策の体系化により、経営リスクを低減
- 法的リスクの軽減:関連法規の義務履行を同時に達成
よくある質問
SCS評価制度の取得は義務ですか?
法律で義務づけられたものではありません。経済産業省が推進する任意の格付け制度であり、取得しなくても法的な罰則はありません。
罰則がないなら対応しなくてよいのではないですか?
本制度は任意であり、取得しなくても法的な不利益はありません。ただし、発注者が受注者に必要な★の段階を提示することを想定した制度であるため、取引先が取引条件として提示した場合には対応の要否を検討することになります。判断の起点は「制度が始まるから」ではなく、取引先から実際にどの水準を求められているかです。求められていない段階で一律に★3を目指す必要はありません。
政府調達ではどのように扱われますか?
2026年8月時点で、政府調達における取扱いは公表されていません。2026年3月の制度構築方針でも、★格付けを入札参加資格と結びつける方針は示されていません。経済産業省は2026年4月の注意喚起で、本制度は個社間の商取引に関し規制措置を講じるものではないと明示しています。「取得しないと入札から除外される」という説明は制度の趣旨と異なるため、そうした説明を伴う勧誘には注意してください。
未対応だと具体的にどんなリスクがありますか?
取引先が★の取得を取引条件として提示した場合に、その条件を満たせないことによる取引機会の逸失が中心です。あわせて、インシデント時に「対策を怠った」として責任を追及されるリスクが挙げられます。サイバー保険料への影響は現時点では想定にとどまります。なお、制度そのものが取引を規制したり、入札参加資格を左右したりするものではありません。
SCS対応は他の法令対応にも役立ちますか?
役立ちます。個人情報保護法が求める安全管理措置とSCSの技術要件は多くが重複し、サイバー対処能力強化法のインシデント報告義務への備えにもなります。またアクセス制御やログ管理の整備は、不正競争防止法上の営業秘密の「秘密管理性」要件を満たすことにもつながります。
まとめ
SCS評価制度は法的義務ではなく、直接的な罰則もありません。経済産業省は2026年4月の注意喚起で、本制度が任意の制度であり、個社間の商取引を規制するものではないこと、特定のセキュリティ製品の導入を必須とするものではないことを明示しています。一方で、発注者が受注者に必要な★の段階を提示する制度設計であるため、取引先から取得を求められる場面は生じ得ます。取引の実態に照らして必要な段階を見極めることが実務上の要点です。
SCS対応の具体的な進め方については、BTNコンサルティングのSCS対応支援にてご相談を承っています。SCS評価制度の概要ページもあわせてご参照ください。