結論から言うと、SCS評価制度の取得は法律で義務づけられたものではありません。経済産業省が推進する任意の格付け制度であり、取得しなくても法的な罰則はありません。

SCS評価制度は、企業のサプライチェーンセキュリティ対策レベルを★1〜★5で格付けし、取引先間でセキュリティの信頼性を可視化するための仕組みです。ISO 27001(ISMS)やプライバシーマークと同様、取得は各企業の任意判断に委ねられています。

法的根拠の整理

SCS評価制度には、ISMSやPマークのような法律による直接的な義務規定はありません。ただし、経済産業省の「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」において、サプライチェーン管理の具体的手段としてSCS格付けの活用が推奨されています。

しかし「事実上の必須」になる理由

法的義務ではないにもかかわらず、SCS評価制度は事実上の必須対策になりつつあります。その理由は3つあります。

1. 取引条件への組み込み

大手企業が取引先に対してSCS★3以上の取得を取引継続の条件とする動きが広がっています。特に自動車、製造業、金融業界で顕著であり、格付け未取得の企業は新規取引はおろか、既存取引の継続も危ぶまれます。

2. 政府調達における優遇

2026年度の本格運用開始に伴い、政府・自治体の調達においてSCS格付けが加点要素として採用される見通しです。将来的には★3以上を入札参加の要件とする方針も示されています。

3. サイバー保険料への影響

損害保険各社がサイバー保険の引受審査においてSCS格付けを参照する動きが始まっています。格付けが高い企業ほど保険料が優遇され、未取得の企業は保険料が割高になる、あるいは引受を拒否されるケースも想定されます。

未対応のビジネスリスク

SCS評価制度に対応しない場合の具体的なビジネスリスクを整理します。

リスク影響対策
取引機会の喪失大手取引先からの取引停止・新規取引の不成立★3の早期取得で取引条件を確保
入札・調達からの排除政府調達や大企業の入札で不利に★3以上を取得し加点要素を確保
サイバー保険料の上昇保険料が割高になる、引受拒否の可能性格付け取得で保険料の優遇を受ける
インシデント時の責任追及「対策を怠った」として損害賠償リスクが増大SCS対応で注意義務の履行を証明
風評リスク同業他社が取得する中で「対策が遅れている企業」と見られる格付け取得と公開で信頼性を発信
採用への悪影響セキュリティ意識の高い人材が敬遠対策の見える化で企業イメージ向上

SCS評価制度自体に罰則はありませんが、関連する法律にはセキュリティ対策の義務が定められています。SCS対応はこれらの法的義務の履行にも役立ちます。

サイバー対処能力強化法(能動的サイバー防御法)

サイバー対処能力強化法は、基幹インフラ事業者に対してインシデント報告義務を課しています。報告義務に違反した場合は行政処分の対象となります。SCS評価制度のインシデント対応要件に対応することは、この法的義務の履行を支援します。

個人情報保護法の安全管理措置

個人情報保護法は、個人情報取扱事業者に対して安全管理措置(技術的・組織的)を義務づけています。2022年の改正で漏洩時の報告義務が追加され、対応が不十分な場合は最大1億円の罰金が科されます。SCSの技術要件はこの安全管理措置と多くが重複しています。

不正競争防止法(営業秘密管理)

営業秘密として法的保護を受けるためには「秘密管理性」が要件です。SCS対応でアクセス制御やログ管理を整備することは、営業秘密の保護要件を満たすことにもつながります。

「罰則」に相当するもの

法律上の罰則はなくても、ビジネス上の「制裁」が事実上の罰則として機能します。

  • 取引停止:大手企業からの取引停止は、中小企業にとって売上の大幅減少に直結
  • 入札排除:政府調達や大企業の入札に参加できなくなり、事業機会が制限される
  • 保険料上昇:年間数十万〜数百万円のコスト増加
  • 風評被害:インシデント発生時に「格付け未取得」が報道されることで、企業イメージが大きく毀損
  • 損害賠償の増額:裁判において「業界標準の対策を怠った」と判断される根拠に
裁判での評価

サイバーインシデントに起因する損害賠償訴訟では、「業界標準の対策を講じていたか」が過失の判断基準となります。SCS格付けが業界標準となった後に対応していなければ、「注意義務違反」と認定されるリスクが高まります。

早期対応のメリット

「義務ではないから対応しない」のではなく、早期対応には明確なビジネスメリットがあります。

  • 取引の安定:大手取引先からの信頼を確保し、取引継続・拡大につなげる
  • 競争優位:同業他社に先駆けて格付けを取得し、差別化を図る
  • コスト削減:サイバー保険料の優遇、インシデント発生時の損害軽減
  • 経営基盤の強化:セキュリティ対策の体系化により、経営リスクを低減
  • 法的リスクの軽減:関連法規の義務履行を同時に達成

まとめ

SCS評価制度は法的義務ではなく、直接的な罰則もありません。しかし、取引条件化、政府調達要件化、保険料への影響により、事実上の必須対策となりつつあります。「義務化される前に対応を済ませる」ことが、中小企業にとって最もリスクの低い選択です。

SCS対応の具体的な進め方については、BTNコンサルティングのSCS対応支援にてご相談を承っています。SCS評価制度の概要ページもあわせてご参照ください。

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BTNコンサルティング 編集部

株式会社BTNコンサルティング|情シス365 運営

Microsoft 365・Google Workspace導入支援、IT-PMI(M&A後のIT統合)、セキュリティ対策を専門とするITコンサルティング企業。中小企業の「ひとり情シス」を支援し、ITの力で経営課題を解決します。