中小企業のSaaS選定はなぜ失敗するのか
SaaS市場は急拡大しており、同じカテゴリに数十の競合サービスがひしめいています。勤怠管理だけでも10種類以上、CRMならさらに多くの選択肢があります。中小企業がSaaS選定で失敗する主な原因は次の3つです。
- 機能比較だけで選ぶ — 機能の豊富さで選んだ結果、複雑すぎて現場が使いこなせない
- 営業トークに流される — ベンダーのデモは理想的なシナリオ。自社の実際の業務フローに合うかは別問題
- 導入後の運用を考えない — 初期設定だけして放置。データ移行、社員教育、既存ツールとの連携が不十分
SaaS選定の5ステップ
Step 1:課題の明確化
「便利そうだから」で始めると失敗します。「何の課題を、どの程度改善したいか」を明確にしましょう。例えば「経費精算に社員1人あたり月2時間かかっている。これを30分以下にしたい」——この具体性が選定の軸になります。
Step 2:要件整理
課題に基づき、必須要件と希望要件を分けてリスト化します。
- 必須要件 — なければ導入しない条件(例:スマホ対応、日本語サポート、SSO対応)
- 希望要件 — あると嬉しい条件(例:API連携、カスタムレポート)
- 制約条件 — 予算上限、セキュリティ要件、既存ツールとの連携必須
Step 3:候補の絞り込み
必須要件で候補を3〜5社に絞ります。IT製品比較サイト、業界団体の事例、同規模企業の導入実績などを参考にしましょう。最初から1社に絞らず、必ず複数社を比較することが重要です。
Step 4:無料トライアルで検証
候補を2〜3社に絞ったら、無料トライアルで実際に使ってみます。この際のポイントは後述します。
Step 5:契約・導入計画
選定後は、データ移行計画、社員研修スケジュール、既存ツールからの切り替えタイミングを含む導入計画を策定します。
SaaS比較の7つの観点
| 観点 | 確認ポイント | 重要度 |
|---|---|---|
| 機能適合性 | 自社の業務フローに合うか。過剰機能ではないか | 最高 |
| 使いやすさ | ITリテラシーが高くない社員でも使えるか | 最高 |
| 料金体系 | 月額/年額、人数課金/定額、追加費用の有無 | 高 |
| セキュリティ | ISO27001、SOC2取得。データ保管場所(国内リージョン) | 高 |
| 連携性 | 既存ツール(M365、会計ソフト等)とのAPI連携 | 中 |
| サポート体制 | 日本語サポート、対応時間、チャット/電話対応 | 中 |
| 解約の容易さ | データエクスポート機能、最低契約期間、解約手数料 | 中 |
特に見落としがちなのは「解約の容易さ」です。合わなかった時にデータを持ち出せるか、ロックイン(囲い込み)されないかを事前に確認しましょう。
無料トライアルの正しい活用法
- 実際の業務データでテストする — サンプルデータではなく、匿名化した実業務データで検証。操作感は実データでないとわからない
- ITリテラシーが低い社員に使わせる — 推進者だけでなく、最もITに不慣れな社員にもテストしてもらう。彼らが使えれば全社展開は成功する
- サポートの品質を確認する — わざと問い合わせを行い、レスポンス速度と回答品質をチェック
- 評価シートで定量比較 — 各候補を5段階で評価するシートを事前に作成。感覚ではなくデータで判断
SaaS導入のよくある失敗パターン
失敗①:全部入りを選ぶ
機能が多ければ良いわけではありません。使わない機能のために高い料金を払い、UIが複雑で現場が敬遠する——という結果に。「80%の業務を20%の機能でカバーできるか」が判断基準です。
失敗②:部門が勝手に導入する
IT部門や経営陣の承認なく、営業部がCRMを契約、経理が別の会計ソフトを導入——といった事態はシャドーITの温床です。SaaS導入の申請・承認フローを整備しましょう。
失敗③:データ移行を甘く見る
旧ツールからのデータ移行は想像以上に工数がかかります。特にCSVエクスポート→インポート時のデータ形式の不一致、文字化け、重複データの処理などに十分な時間を確保してください。
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まとめ
SaaS選定の成否は「課題の明確化」で8割決まります。機能比較表に目を奪われず、「自社の課題を解決できるか」「現場が使いこなせるか」を基準に選びましょう。必ず複数社を比較し、無料トライアルで実業務データを使った検証を行うことが、失敗を防ぐ最も確実な方法です。