なぜ今クラウド移行が必要なのか
中小企業のIT環境にはまだオンプレミスのサーバーが数多く残っています。社内にファイルサーバーを置いている、Exchange Serverでメールを運用している、Active Directoryがオンプレミスで動いている——こうした環境は、いくつかの深刻な問題を抱えています。
- ハードウェアの老朽化 — サーバーの平均寿命は5年。老朽化によるハードウェア障害のリスクが年々増大
- 保守コストの増大 — サーバールームの電力、空調、UPS、OSライセンス更新、定期バックアップテープ交換など維持コストが高い
- 災害リスク — 地震、火災、浸水でサーバーが物理的に損壊した場合、復旧に数日〜数週間を要する
- テレワーク非対応 — 社内サーバーへのアクセスにVPNが必要で、速度・安定性に問題がある
- スケーラビリティの欠如 — 容量追加のたびにハードウェア購入が必要。急な拡張に対応できない
クラウドに移行すれば、これらの課題をまとめて解決でき、IT管理の負担を大幅に軽減できます。
クラウド移行の主な対象
| オンプレミス | 移行先クラウドサービス | 移行難易度 |
|---|---|---|
| ファイルサーバー(Windows Server) | SharePoint Online + OneDrive | 中 |
| Exchange Server(メール) | Exchange Online(M365) | 中〜高 |
| Active Directory | Microsoft Entra ID(Entra Connect併用) | 高 |
| 社内Webアプリ | Azure App Service / AWS | 高 |
| バックアップサーバー | Azure Backup / Veeam Cloud | 低 |
| プリントサーバー | Universal Print(M365) | 低 |
クラウド移行の進め方
Phase 1:アセスメント(1ヶ月)
現在のオンプレミス環境を詳細に調査します。
- サーバーの台数、用途、スペック、OS、保証期限の一覧作成
- ファイルサーバーのデータ量、フォルダ構造、アクセス権限の調査
- Active Directoryの構成(OU、グループポリシー、ユーザー数)の確認
- ネットワーク帯域の確認(大量データのクラウド転送に耐えるか)
- 業務アプリケーションのクラウド互換性確認
Phase 2:パイロット移行(1〜2ヶ月)
全社一斉移行はリスクが高いため、小規模なパイロットチーム(5〜10名)で先行移行します。
- パイロットチームのメールボックスをExchange Onlineに移行
- 一部のファイル共有フォルダをSharePoint Onlineに移行
- Entra ID Connectの設定(ハイブリッド構成でオンプレADと同期)
- 2〜4週間の運用テスト、課題の洗い出し
Phase 3:全社移行(2〜4ヶ月)
パイロットの結果を踏まえ、全社規模で段階的に移行を進めます。
- メール移行 — 部門単位でバッチ移行。夜間・週末に実施し、翌営業日に動作確認
- ファイルサーバー移行 — SharePoint Migration Toolでデータ移行。権限設計を事前に完了
- AD移行 — Entra ID ConnectからEntra ID完全移行(段階的にオンプレADを廃止)
- 社員教育 — SharePoint / OneDriveの使い方研修。特にフォルダ構造の変更点を周知
Phase 4:オンプレミス廃止(1ヶ月)
全サービスのクラウド移行完了後、オンプレミスサーバーの役割を段階的に縮小・廃止します。切り戻し期間(1〜2ヶ月)を設けた上で、最終的にサーバーを撤去します。
オンプレ vs クラウドのコスト比較
50名規模の企業を想定したコスト比較です。
| 項目 | オンプレミス(年額) | クラウド(年額) |
|---|---|---|
| サーバーハードウェア(5年償却) | 約60万円 | 0円 |
| Windows Serverライセンス | 約15万円 | 0円(M365に含む) |
| 電力・空調 | 約10万円 | 0円 |
| バックアップ | 約10万円 | 約6万円 |
| Microsoft 365 | — | 約112万円(Standard × 50名) |
| 保守・運用人件費 | 約120万円 | 約40万円(削減分) |
| 合計 | 約215万円 | 約158万円 |
上記はあくまで目安ですが、クラウド移行により年間50〜80万円程度のコスト削減が見込めるケースが多いです。さらに、災害リスクの大幅な低減、テレワーク対応、管理工数の削減といった定性的なメリットも加わります。
クラウド移行の注意点
- ネットワーク帯域 — 大量のファイル移行には十分な帯域が必要。インターネット回線の増強やオフピーク転送を検討
- 権限設計の見直し — オンプレのフォルダ権限をそのままクラウドに持ち込むと複雑化する。移行を機に権限構造を整理
- 業務アプリの互換性 — オンプレの社内サーバーに依存するアプリケーションがある場合、クラウド対応版への切り替えやリプレースが必要
- データの法的要件 — 業界規制によりデータ保管場所に制約がある場合、クラウドのリージョン選択に注意
- 切り戻し計画 — 必ずロールバック手順を準備。移行失敗時にオンプレミスに戻れる状態を維持
情シス365のStart365・Project365プランでは、オンプレミスからMicrosoft 365への移行をプロジェクトとして推進します。アセスメントからデータ移行、Active Directory統合、社員研修まで一貫対応。
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まとめ
オンプレミスからクラウドへの移行は、コスト削減だけでなく、セキュリティ強化、テレワーク対応、災害対策を同時に実現する戦略的な投資です。一度に全部を移行する必要はありません。メール→ファイルサーバー→ADの順で、段階的に進めていきましょう。