Microsoft 365のデータ保護はユーザーの責任です。3-2-1ルールに基づき、専用のバックアップSaaSを導入し、イミュータブルバックアップでランサムウェアに備えましょう。四半期に1回のリストアテストを忘れずに。
なぜバックアップが必要か
「クラウドにデータがあるからバックアップは不要」という誤解が広まっていますが、Microsoftの責任共有モデルでは、データの保護はユーザーの責任です。
- 誤操作による削除:従業員がファイルやメールを誤って削除(ゴミ箱の保持期間は最大93日)
- ランサムウェア:OneDrive/SharePointのファイルが暗号化される
- 退職者のデータ:退職者のアカウント削除後にデータが消失
- 悪意のある内部者:不満を持つ従業員がデータを意図的に削除
3-2-1ルール
バックアップの基本原則「3-2-1ルール」は、あらゆる企業規模に適用できます。
| ルール | 内容 | 中小企業での実装例 |
|---|---|---|
| 3 | データのコピーを3つ持つ | 本番データ+クラウドバックアップ+オフサイトコピー |
| 2 | 2種類以上の異なる媒体に保存 | クラウド(M365)+バックアップSaaS+外付けHDD/NAS |
| 1 | 1つはオフサイト(別拠点)に保管 | クラウドバックアップサービス(別リージョン) |
クラウド移行は「何を移すか」より「何を移さないか」の判断でコストが決まります。現状の棚卸しから移行先の振り分け、5年間の総保有コスト比較までご支援します。
Microsoft 365 移行支援 を見る →Microsoft 365のバックアップ
M365の標準機能(バックアップではない)
| 機能 | 保持期間 | 制限 |
|---|---|---|
| 削除済みアイテム | 30日(Exchange)/ 93日(SharePoint/OneDrive) | 期間経過後は復元不可 |
| バージョン履歴 | 500バージョン(既定) | ファイル単位の復元のみ |
| 訴訟ホールド | 無期限 | 法的目的での保持(E3以上) |
これらはバックアップではありません。保持期間を過ぎたデータ、テナント全体の障害、ランサムウェアによる暗号化からの復元はできません。
バックアップソリューション比較
| ソリューション | 月額目安 | 対象 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Veeam Backup for M365 | $2〜/ユーザー | Exchange/SharePoint/OneDrive/Teams | 業界標準、柔軟なリストア |
| AvePoint Cloud Backup | $3〜/ユーザー | M365全サービス | きめ細かいリストアオプション |
| Acronis Cyber Protect | $5〜/ユーザー | M365+エンドポイント | バックアップ+セキュリティ統合 |
| Microsoft 365 Backup | $2/ユーザー | Exchange/SharePoint/OneDrive | Microsoft純正、高速リストア |
ランサムウェア対応
ランサムウェアがバックアップデータも暗号化するケースが増えています。イミュータブル(変更不可)バックアップが必須です。
- イミュータブルストレージ:一定期間はデータの変更・削除ができないストレージ
- エアギャップ:バックアップネットワークを本番ネットワークから完全に分離
- 多世代保持:30日/90日/1年の複数世代を保持(感染発覚が遅れた場合に対応)
リストアテストの重要性
- 四半期に1回:バックアップからのリストアテストを実施
- テスト項目:メール1通のリストア、SharePointサイト全体のリストア、OneDriveフォルダのリストア
- RTO/RPOの確認:リストアにかかる時間(RTO)とデータ損失の許容範囲(RPO)を確認
よくある質問
Microsoft 365を使っていればバックアップは不要ですか?
不要ではありません。標準機能の削除済みアイテムはExchangeで30日、SharePoint/OneDriveで93日しか保持されず、期間経過後は復元できません。バージョン履歴もファイル単位の復元に限られます。誤操作による削除、ランサムウェアによる暗号化、退職者アカウント削除後のデータ消失に備えて別途バックアップが必要です。
3-2-1ルールとは何ですか?
データのコピーを3つ持ち、2種類以上の異なる媒体に保存し、1つはオフサイト(別拠点)に保管するというバックアップの原則です。中小企業ではM365+バックアップSaaS+外付けHDD/NASという構成が実装例になります。
ランサムウェア対策として何が必要ですか?
一定期間データの変更・削除ができないイミュータブルストレージ、バックアップネットワークを本番から完全分離するエアギャップ、感染発覚が遅れた場合に備えた30日/90日/1年の多世代保持です。
リストアテストはどのくらいの頻度で行いますか?
四半期に1回が目安です。メール1通のリストア、SharePointサイト全体のリストア、OneDriveフォルダのリストアを実際に試し、復旧時間(RTO)とデータ損失の許容範囲(RPO)が設計どおりかを確認します。
まとめ
Microsoft 365のデータ保護はユーザーの責任です。3-2-1ルールに基づき、専用のバックアップSaaSを導入し、イミュータブルバックアップでランサムウェアに備えましょう。四半期に1回のリストアテストを忘れずに。
RTO/RPOの設計
| 指標 | 定義 | 中小企業の目安 |
|---|---|---|
| RPO(Recovery Point Objective) | どの時点までのデータを復元するか | メール: 1時間 / ファイル: 4時間 |
| RTO(Recovery Time Objective) | 何時間以内にシステムを復旧するか | メール: 4時間 / ファイル: 8時間 |