回線選定が重要な理由
クラウドシフトが進んだ現在、インターネット回線は企業の生命線です。Teams会議、M365、SaaS、クラウドストレージ——業務のほぼすべてがインターネット回線を経由します。回線の品質が業務の生産性に直結する時代です。
- Teams会議がカクつく:帯域不足で映像・音声が途切れる
- クラウドストレージが遅い:大容量ファイルのアップロード・ダウンロードに時間がかかる
- 全社的な速度低下:利用者が増えると帯域を奪い合って全員が遅くなる
- 回線障害で業務停止:1本の回線に依存していると、障害時に全業務がストップ
回線の種類と比較
| 回線 | 最大速度 | 月額目安 | 特徴 | 適したケース |
|---|---|---|---|---|
| フレッツ光ネクスト | 1Gbps(ベストエフォート) | ¥4,000〜6,000 | 最も普及。エリアが広い | 小規模オフィス |
| フレッツ光クロス | 10Gbps(ベストエフォート) | ¥6,000〜8,000 | 10Gbps対応。大容量通信に最適 | 50名以上のオフィス |
| NURO Biz | 2Gbps〜10Gbps | ¥20,000〜 | SLA付き法人向け。固定IPあり | 安定性重視の法人 |
| ギガらくVPN(NTT東) | 1Gbps | ¥4,500〜 | フレッツ+VPN機能を統合 | 拠点間接続が必要な企業 |
| 専用線(イーサネット) | 100Mbps〜10Gbps(帯域保証) | ¥50,000〜500,000 | 帯域100%保証、SLA付き | ミッションクリティカルな用途 |
| 4G/5G(モバイル回線) | 100Mbps〜数Gbps | ¥3,000〜8,000 | 工事不要、即日開通 | バックアップ回線、仮設オフィス |
帯域設計の考え方
必要な帯域は利用者数 × 用途で概算できます。
| 用途 | 1ユーザーあたり必要帯域 |
|---|---|
| Web閲覧・メール | 1〜2Mbps |
| SaaS利用 | 2〜5Mbps |
| Teams音声通話 | 0.1Mbps |
| Teams映像会議 | 1.5〜4Mbps |
| 大容量ファイル転送 | 10〜50Mbps(一時的) |
💡 帯域の目安
50名のオフィスで全員がSaaS利用+10名がTeams会議中の場合:
50名 × 3Mbps + 10名 × 3Mbps = 約180Mbps
ベストエフォート回線は最大速度の30〜50%が実効速度のため、1Gbps回線(実効300〜500Mbps)で十分です。100名を超える場合はフレッツ光クロス(10Gbps)を検討しましょう。
ISP選定のポイント
- 法人向けプランの有無:固定IPアドレス、SLA、法人サポート窓口の有無
- 固定IPアドレス:VPN、メールサーバー、IP制限が必要なSaaSにはグローバル固定IPが必須
- IPoE対応:従来のPPPoE方式は混雑時に速度低下。IPoE(IPv4 over IPv6)対応ISPを選ぶことで安定した速度を確保
- バックボーン容量:ISPのバックボーンが大きいほど、利用者が増えても速度低下しにくい
主要な法人向けISP
| ISP | 特徴 | 固定IP |
|---|---|---|
| OCN光 IPoE | NTTコム。法人利用の定番、SLA付きプランあり | ○ |
| KDDI(au one net) | auスマートバリュー連携、法人プランあり | ○ |
| IIJmio(法人) | 技術力の高さで定評。IPoE対応 | ○ |
| NURO Biz | 回線+ISP一体型。高速・SLA付き | ○ |
冗長化の設計
インターネット回線が1本だけだと、回線障害時に全業務がストップします。BCP(事業継続)の観点から、回線の冗長化を検討しましょう。
| 冗長化パターン | 構成 | 費用追加 | 切替時間 |
|---|---|---|---|
| 異キャリア2回線 | フレッツ+NURO等の異なるキャリアの2回線 | 月額+2〜5万円 | 自動(UTMのSD-WAN機能) |
| 有線+モバイル | 光回線+4G/5Gルーター | 月額+3,000〜8,000円 | 手動 or 自動 |
| 同キャリア2回線 | フレッツ2本 | 月額+4,000〜6,000円 | 自動 |
最もコスパの良い冗長化は「光回線+4G/5Gモバイルルーター」です。月額数千円の追加で、光回線障害時にモバイル回線にフェイルオーバーできます。
SLA付き回線の判断
- SLAが必要なケース:VPN経由で拠点間通信、自社サーバーを外部公開、ミッションクリティカルな業務
- SLA不要なケース:SaaS/クラウド中心の利用、モバイル回線でバックアップ済み
- SLAの内容:稼働率保証(99.9%等)、障害復旧時間、サービスクレジット(返金)
まとめ
中小企業の回線選定は「帯域設計(利用者数×用途)→ IPoE対応ISPの選定 → 固定IPの確保 → 冗長化(光+モバイル)」の順で検討します。50名以下なら1Gbps、100名以上なら10Gbps回線を推奨。冗長化は光+4G/5Gが最もコスパの良い選択です。