この記事の結論

電子帳簿保存法への対応は、事務処理規程の策定、ファイル命名規則の決定、保存場所の整備の3ステップで最低限の対応が可能です。M365を活用すれば追加コストなしで要件を満たせます。まだ対応が不十分な場合は、早急に整備を進めましょう。

電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法(電帳法)は、国税関係帳簿・書類の電子データ保存に関する法律です。2024年1月から電子取引データの電子保存が完全義務化されました。メールやクラウドサービスで受け取った請求書・領収書のPDFを紙に印刷して保存することは原則として認められなくなっています。

中小企業にとって「何をどこまでやればいいのか」が分かりにくい法律ですが、最低限やるべきことは明確です。

電帳法の3つの区分

区分概要義務/任意
電子取引メール・クラウドで送受信した請求書・領収書等の電子保存義務(2024年1月〜)
スキャナ保存紙の領収書・請求書をスキャンして電子保存任意
電子帳簿等保存会計ソフトで作成した帳簿・決算書の電子保存任意
まず「電子取引」対応が必須

3区分のうち、電子取引データの保存だけが義務です。スキャナ保存と電子帳簿保存は任意なので、まず電子取引対応に集中しましょう。

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電子取引の保存要件

電子取引データの保存には以下の要件を満たす必要があります。

  • 真実性の確保:タイムスタンプの付与、訂正・削除の履歴管理、または事務処理規程の備付けのいずれか
  • 可視性の確保:ディスプレイ・プリンタでの出力、検索機能の確保(取引年月日・取引金額・取引先での検索)

ただし、売上高5,000万円以下の事業者は検索要件が不要(税務調査時にダウンロード要求に応じればOK)という猶予措置があります。

中小企業が最低限やるべき3つのこと

1. 事務処理規程の策定

タイムスタンプ付与の代替として、「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」を策定・備付けします。国税庁のWebサイトにサンプルが公開されており、自社名を入れるだけで利用可能です。

2. ファイル保存ルールの決定

電子取引データを「取引年月日_取引先名_金額」の命名規則でフォルダに保存するルールを決めます。例:20260301_株式会社ABC_55000.pdf

3. 保存場所の整備

SharePoint Online、OneDrive for Business、またはNASの共有フォルダに「電子取引データ」フォルダを作成し、年度・月ごとに整理します。

対応ツールの比較

ツール特徴月額目安向いている企業
SharePoint + 命名規則M365ユーザーなら追加コスト不要。手動運用0円(M365契約内)少量の電子取引、M365導入済み
マネーフォワード クラウドBoxタイムスタンプ自動付与、検索機能付き3,000円〜マネーフォワード会計ユーザー
freee会計電帳法対応のファイルボックス機能内蔵会計料金に含むfreeeユーザー
invox電子帳簿保存AI-OCRによる自動データ化、検索対応9,800円〜取引量が多い企業

Microsoft 365での対応方法

M365を導入済みの企業は、追加コストなしで電帳法に対応できます。

  • SharePoint Onlineにドキュメントライブラリを作成し、メタデータ列(取引日、取引先、金額)を追加
  • OneDrive for Businessで個人受領分を一時保管、定期的にSharePointへ移動
  • Outlookのメール添付PDFをSharePointに直接保存するフローをPower Automateで自動化
  • Microsoft Purviewの保持ポリシーで法定保存期間(7年)の自動管理

インボイス制度への対応

インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、2023年10月から開始された消費税の仕入税額控除に関する制度です。買い手が仕入税額控除を受けるには、売り手が発行する適格請求書(インボイス)の保存が必要になりました。

電子で受領した適格請求書は電子帳簿保存法の電子取引要件も満たす必要があるため、両制度は一体で設計するのが実務上の鉄則です。別々に対応すると請求書の二重管理が発生します。

適格請求書の記載要件

項目内容
登録番号適格請求書発行事業者の登録番号(T+13桁)
取引年月日取引の日付
取引内容品目・サービス名(軽減税率対象の場合はその旨)
税率ごとの合計税率(8%/10%)ごとの合計額
税率ごとの消費税額税率ごとの消費税額
発行者・受領者の氏名/名称取引の当事者名

IT部門が対応すべき3つのこと

  • 請求書発行システムの更新:会計ソフトやExcelテンプレートが適格請求書の要件を満たしているか確認します。登録番号の記載と、税率別の消費税額計算が正しく行われる必要があります
  • 受領請求書の管理フロー構築:受領した適格請求書を「登録番号の有効性確認 → 保存 → 検索可能な状態で管理」する流れを作ります。国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトとのAPI連携も検討対象です
  • 電帳法との一本化:インボイスの保存と電子取引の保存要件を同じ仕組みに載せます。本記事で解説している検索要件・真実性の確保は、そのままインボイス保存にも適用できます

生成AIを使った請求書処理の自動化については 電子帳簿保存法・インボイス制度×生成AI で解説しています。

違反した場合のリスク

  • 青色申告の取消し:電子取引データを適切に保存していない場合、税務調査で青色申告の承認が取り消される可能性
  • 追徴課税:保存義務違反により経費として認められない場合、追徴課税のリスク
  • 重加算税の加重:電子データの隠蔽・改ざんが認められた場合、重加算税が10%加重

BTNコンサルティングの支援

電帳法対応のためのSharePoint設計、Power Automateによる自動保存フローの構築、事務処理規程の策定支援を提供します。M365環境を活用した追加コスト最小限の対応をサポートします。

よくある質問

電子帳簿保存法で何が義務化されたのですか?

2024年1月から電子取引データの電子保存が完全義務化されました。メールやクラウドサービスで受け取った請求書・領収書のPDFを紙に印刷して保存することは、原則として認められなくなっています。

電帳法の3区分とは何ですか?

メール・クラウドで送受信した請求書・領収書等を電子保存する「電子取引」(2024年1月から義務)、紙の領収書・請求書をスキャンして保存する「スキャナ保存」(任意)、会計ソフトで作成した帳簿・決算書を保存する「電子帳簿等保存」(任意)です。

電子取引の保存要件は何ですか?

真実性の確保として、タイムスタンプの付与、訂正・削除の履歴管理、または事務処理規程の備付けのいずれかが必要です。可視性の確保として、ディスプレイ・プリンタでの出力と、取引年月日・取引金額・取引先での検索機能が求められます。

中小企業が最低限やるべきことは?

1.国税庁のサンプルを利用して「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」を策定・備付ける、2.「取引年月日_取引先名_金額」の命名規則を決める(例:20260301_株式会社ABC_55000.pdf)、3.SharePoint OnlineやOneDrive、NASに「電子取引データ」フォルダを作り年度・月ごとに整理する、の3点です。

まとめ

電子帳簿保存法への対応は、事務処理規程の策定、ファイル命名規則の決定、保存場所の整備の3ステップで最低限の対応が可能です。M365を活用すれば追加コストなしで要件を満たせます。まだ対応が不十分な場合は、早急に整備を進めましょう。