Windows 10 サポート終了後の現状

2025年10月14日にWindows 10の延長サポートが終了しましたが、中小企業の約4割がいまだにWindows 10端末を業務で利用しているとされています。「動いているから大丈夫」という判断は、セキュリティパッチが配信されない環境でのサイバー攻撃リスクを日々高めています。

MicrosoftはWindows 10 ESU(Extended Security Updates)を有償で提供していますが、1台あたり年額61ドル(初年度)で、2年目以降は倍額になるため、中長期的にはWindows 11への移行が不可避です。

Windows 11 移行でよくある5つの落とし穴

1. ハードウェア要件を満たさないPCが多い

Windows 11はTPM 2.0セキュアブート対応UEFI第8世代以降のIntel CPUまたはAMD Ryzen 2000以降を必須としています。2020年以前に導入したPCの多くがこの要件を満たさず、OS移行ではなくPC買い替えが必要になります。

💡 要件チェックの方法

Microsoftの「PC正常性チェック」ツールを全端末で実行し、対象外PCの台数を正確に把握しましょう。Intuneを利用している場合は、デバイスインベントリから一括でTPM・CPUの情報を確認できます。

2. 業務アプリの互換性問題

Windows 11ではIEモードの制限強化、32ビットUEFI非対応、一部レガシーAPIの廃止などにより、古い業務アプリが動作しないケースがあります。特に以下のアプリは事前検証が必須です。

  • ActiveXベースの社内Webシステム(IE依存)
  • VB6やVBA製の業務ツール(COM依存)
  • 古いバージョンの会計・販売管理ソフト
  • プリンタドライバ・複合機連携ソフト

3. ユーザーインターフェースの変更による混乱

スタートメニューの中央配置、右クリックメニューの簡略化、タスクバーの仕様変更など、日常的な操作感が大きく変わります。ITリテラシーにばらつきがある中小企業では、問い合わせ対応の負荷増大を見込んでおく必要があります。

4. データ移行とプロファイル設定の引き継ぎ

インプレースアップグレード(上書きインストール)が理想ですが、ハードウェア要件を満たさないPCでは新規PCへのデータ移行が発生します。ローカル保存のファイル、ブラウザのブックマーク、メール設定、プリンタ設定などの移行計画が必要です。

5. ライセンスコストの見落とし

Windows 11 ProのOEM版はPC購入費に含まれますが、ボリュームライセンスの移行やMicrosoft 365 Business Premiumとの組み合わせでのライセンス最適化を検討しないと、不要なコストが発生します。

移行準備チェックリスト

フェーズチェック項目担当期限目安
調査全端末のTPM・CPU・メモリをインベントリ調査IT担当1週間
業務アプリの互換性を一覧化・検証IT担当+業務部門2週間
プリンタ・周辺機器のドライバ対応状況を確認IT担当1週間
計画PC買い替え台数・予算を算出IT担当+経営層1週間
移行スケジュール(部署別ロールアウト)を策定IT担当1週間
ユーザー向けマニュアル・FAQを作成IT担当2週間
実行パイロット部署(5〜10台)で先行移行IT担当2週間
問題点を洗い出し・修正IT担当1週間
全社展開(部署単位で段階的に)IT担当1〜3ヶ月
完了後旧PC(Windows 10)のデータ消去・廃棄IT担当2週間
移行完了報告・残課題の整理IT担当1週間

Intuneを活用した効率的な移行

Microsoft Intuneを利用している場合、移行作業を大幅に効率化できます。

Intune機能移行での活用方法
デバイスインベントリTPM・CPU・OS情報を管理画面から一括確認。移行対象の自動抽出
Windows Autopilot新規PCのゼロタッチデプロイ。ユーザーがサインインするだけでセットアップ完了
構成プロファイルWi-Fi、VPN、メール、プリンタ等の設定を自動配布
アプリ配布業務アプリのサイレントインストール。Win32アプリもIntuneから配布可能
Windows Update管理更新リングで段階的にアップデートを配信。品質更新と機能更新を分離管理
コンプライアンスポリシーWindows 10端末を「非準拠」に設定し、移行を促進
💡 Autopilotで移行コストを削減

従来のキッティング作業(1台あたり2〜3時間)をAutopilotで30分程度に短縮できます。100台規模の移行では200〜300時間の工数削減になり、外部委託コストの大幅な圧縮が可能です。

ESU(延長セキュリティ更新)の判断基準

すべての端末を一度に移行できない場合、ESUの購入で移行期間を確保する選択肢もあります。

項目ESU購入が適切なケース即時移行が適切なケース
業務アプリ互換性検証に時間が必要な基幹システムがあるクラウドアプリ中心で互換性問題がない
端末台数100台以上で段階的移行が必要50台未満で一括移行が可能
予算今期のPC購入予算が確保できないPC更新の予算が確保済み
コスト1年目: 61ドル/台、2年目: 122ドル/台、3年目: 244ドル/台新規PC購入費(8〜15万円/台)

ESUは最大3年間提供されますが、累計コストはPC買い替えに匹敵します。移行計画を並行して進め、ESUは「つなぎ」として利用するのが賢明です。

現実的な移行スケジュール例

従業員100名・PC80台の中小企業を想定したスケジュール例です。

時期作業内容対象台数
1ヶ月目インベントリ調査・アプリ互換性検証・予算策定-
2ヶ月目パイロット移行(IT部門+協力的な部署)10台
3〜4ヶ月目第1波展開(互換性問題のない部署)30台
5〜6ヶ月目第2波展開(業務アプリ対応が必要な部署)30台
7ヶ月目残存端末の移行・旧PC廃棄・完了報告10台

まとめ

Windows 11への移行は「OSの入れ替え」ではなく、ハードウェア更新・アプリ検証・運用設計を含む総合プロジェクトです。「まだ動いているから」と先延ばしにするほど、ESUコストの累積とセキュリティリスクの増大という二重の負担を背負うことになります。

まずはインベントリ調査から始め、移行対象の全体像を把握することが第一歩です。Intuneを活用すれば移行作業の自動化・効率化も実現できます。自社だけでの対応が難しい場合は、専門家のサポートを検討しましょう。