サイバー保険とは

サイバー保険は、サイバー攻撃や情報漏洩によって発生する損害賠償、事故対応費用、逸失利益を補償する保険商品です。ランサムウェア、不正アクセス、従業員のミスによる情報漏洩など、幅広いサイバーリスクをカバーします。

セキュリティ対策は「被害の確率を下げる」手段ですが、リスクをゼロにはできません。サイバー保険は「万が一の被害を経済的にカバーする」ためのリスク移転の手段です。

補償範囲

補償区分内容具体例
損害賠償第三者への賠償責任顧客情報漏洩に伴う損害賠償金、訴訟費用
事故対応費用インシデント対応にかかる費用フォレンジック調査、法律相談、顧客への通知・お詫び、コールセンター設置
逸失利益事業中断による利益損失ランサムウェアによるシステム停止期間の売上減少
データ復旧費用データの復元にかかる費用バックアップからの復旧作業、システム再構築
危機管理費用風評被害への対応費用PR会社への委託、記者会見費用
⚠️ 一般的に補償されないもの

身代金の支払い(商品により異なる)、意図的な不正行為、戦争・テロ行為、既知の脆弱性を放置した結果の被害(保険会社により判断が異なる)。

保険料の決定要因

  • 業種:個人情報を大量に扱う業種(医療、金融、EC)は保険料が高い
  • 売上規模・従業員数:規模が大きいほど保険料が高い
  • セキュリティ対策の状況:MFA、EDR、バックアップの導入状況が保険料に直結
  • 過去のインシデント履歴:過去に被害があると保険料が上昇
  • 補償限度額・免責金額:補償限度額が高いほど、免責額が低いほど保険料が高い

加入前に整備すべきセキュリティ対策

多くのサイバー保険は加入条件としてセキュリティ対策の実施を求めます。以下は一般的な要件です。

対策要件レベル理由
MFA(多要素認証)ほぼ必須不正アクセスの大半を防止
EDR強く推奨〜必須ランサムウェアの早期検知・対応
バックアップ必須自力復旧能力の証明
パッチ管理推奨既知の脆弱性の放置は免責の対象
従業員教育推奨フィッシング対策の基本
インシデント対応計画推奨被害最小化の体制

選び方のポイント

  • 補償限度額:年間売上の5〜10%を目安に設定
  • 免責金額:自社で許容できる自己負担額を設定(小さいほど保険料は高い)
  • 事故対応サービスの有無:フォレンジック業者や法律事務所の紹介サービスが付帯しているか
  • ランサムウェア対応:身代金支払い費用の補償の有無(商品により異なる)
  • サプライチェーン被害:自社起因で取引先に被害が及んだ場合の補償

主要商品の特徴

保険会社商品名特徴
東京海上日動サイバーリスク保険国内最大手。フォレンジック業者ネットワークが充実
三井住友海上サイバープロテクター中小企業向けパッケージが充実
損保ジャパンサイバー保険事故対応サービス付帯
AIG損保CyberEdgeグローバル対応。海外拠点がある企業向け

BTNコンサルティングの支援

サイバー保険の加入条件を満たすためのセキュリティ対策整備(MFA導入、EDR設定、バックアップ設計、インシデント対応計画策定)を支援します。

まとめ

サイバー保険はセキュリティ対策の代替ではなく、リスク移転の手段です。加入の前提としてMFA、EDR、バックアップの整備が求められるため、まずセキュリティ対策を整備し、その上で残存リスクを保険でカバーする二段構えが最適です。

保険活用の実例

従業員50名の製造業者がフィッシングメール経由でランサムウェアに感染。業務システムが2日間停止しフォレンジック調査費用800万円、逸失利益500万円、顧客への謝罪費用200万円が発生しました。サイバー保険に加入していたため自己負担は免責金額の50万円のみ。保険未加入であれば1500万円の実費負担が発生していた計算です。このようにサイバー保険は最悪のシナリオに対する経営リスクヘッジとして機能します。